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【ウエストのおんな(第1話)】~西彼在住アラフィフ主婦とその日常/若者まわり・おばちゃんまわり~

若者まわり・おばちゃんまわり

 

私の名前は海近住子(うみちかすみこ)。西海市に嫁ぎ住み、フルパートで働くアラフィフ主婦である。

今日も仕事を終えいつもの帰り道、右にウインカーをあげ、手慣れたハンドルさばきでその場所へ。

 

そこは主婦の園 『スーパーウエスト』。

 

時間は午後5時過ぎ、あちらこちらから西海の主婦たちが集まり、にわかに殺気立つ。

誰もが晩ごはんのおかずに頭を悩ませ、店内を放浪するのだ。

ある人は精肉コーナー、ある人は鮮魚コーナー、そしてある人は野菜コーナーで今晩の献立決めと、迫る時間と戦っているのだろう。

「早く帰って旦那とかわいいヒナドリ達に手作りごはんを作らねば!」

そういう私もまた、その中のひとりなのである。

さて、ウエストに集う西海主婦たちは『若者まわり』『おばちゃんまわり』というものを聞いたことがあるだろうか?

『若者まわり』とは店の入り口から左手のデザート、惣菜方面から時計回りに店内を回ること。

『おばちゃんまわり』とはその逆で、野菜コーナーから左回りに店内を回ることである。

何の意味があるのか? 誰がそう決めたのか?

それはいまだ解明されていない。

 

私はその法則を知らぬまま、時計回りに歩いていた。

そう無意識のうちに『若者まわり』。

アラフィフでも『若者まわり』。

 

何か?問題でも?

 

 

これはきっと生まれながらに、私の中の細胞に『若者まわり』をするように、すでに何かプログラミングされており、この世に生を受けた瞬間から『若者まわり』をする運命にあったのだとそう思うほかにないだろう。

なにせ無意識の行動なのだから。

『おばちゃんまわり』をする人は同じく、『おばちゃんまわり』をするように『おばちゃんまわり』の種をそっと植え込まれているのだ。

 

人類の不思議である・・・。

 

私はこの先何年、何十年生き続けたとしても『若者まわり』をするだろう。

それは『運命』に逆らうことはできないからだ。受け止めるしかない。

 

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はっ!しまった!

 

くだらんことをを妄想しているうちに鮮魚コーナーも精肉コーナーも通り過ぎてしまった!

 

しょうがない 今日は主婦のお助けメニュー『カレーライス』だ。

野菜コーナーでジャガイモ買って帰ろう。

 

決して手抜きなどではない。手抜きではない・・・。

 

今日もスーパーウエストは そんな私を優しく受け入れてくれる。

次回「ウエストのおんな第2話」はこちらから

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