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西海市の聖地『HOGET』のルーツを探る。日本中が欲しがった石のお鍋の物語

千年以上前の西海市のお話

こんにちは、aoharuです!

「前回の『ゆで干し大根』の記事」に続き、今回も西海市の驚くべきポテンシャルを深掘りします。

「え、西海市にそんなものが!?」と思わず声が漏れてしまうような、知られざるお話。今回は一気に時間をさかのぼり、千年以上前の西海市へご案内しましょう。

西海市には「もうひとつの日本一」があった

突然ですが、みなさんは「石鍋(いしなべ)」をご存知ですか?

その名のとおり、石でできたお鍋のことです。
現代では鉄やステンレスのお鍋が当たり前ですが、古代から中世にかけて、鉄製のお鍋がまだ一般に普及していなかったころには、

石を削り出して作った「石鍋」が広く使われていたんです。

そしてその石鍋を、日本で最も大規模に作っていた場所が、実は西海市だったんです。

そもそも「石鍋」って何?

写真1:滑石

石鍋の材料は、滑石(かっせき)と呼ばれる鉱物です。
滑石は名前のとおりすべすべとした手触りで、比較的やわらかく加工しやすいという特徴があります。

写真2:石鍋

この滑石を削り、内側をくり抜いてお鍋の形に仕上げたものが「石鍋」

当時の調理器具として、特に西日本を中心に広く普及していたようです。「石のお鍋で煮炊きするって、どんな感じだろう?」と想像すると、なんだかロマンを感じませんか?(笑)

「牛一頭に石鍋4つ」の衝撃

ここで、思わず目を疑ってしまうような話を一つ。

図1:牛一頭に石鍋4つ!?

当時の記録によると、西彼杵半島でつくられた石鍋は、

「牛一頭に石鍋4つ」と言われるほどの高価なものだったそうです。

…すごくないですか?
牛一頭と石鍋4つが、同じくらいの価値だったということですよね。

ちなみに牛一頭が当時どのくらいの価値だったかというと、米十数石分ともいわれ、現代の感覚でいえば『トラクター一台分』くらいの超高額な資産でした。中世(室町期)でも、米10石前後(現代イメージで200~450万円相当)とされることが多く、農耕の要で「これ一頭持てば一人前」の象徴だったそうです。

それだけこの地域の石鍋が、貴重な高級品として流通していたということ。

しかも、その流通先は近隣にとどまらず、北は青森・関東から、南は琉球(沖縄)まで

出土品の記録から、日本各地に届いていたことがわかっています。
千年も前に、いまの西海市から全国へ。

なんだかすごいスケールの話だと思いませんか?

日本唯一の国指定史跡、ホゲット石鍋製作遺跡

写真3:ホゲット石鍋製作遺跡

その石鍋づくりの中心地として残っているのが、西海市大瀬戸町にある「ホゲット石鍋製作遺跡」です。

ここは、滑石製石鍋の製作工房跡として、1981年(昭和56年)に国の史跡に指定されています。

そして特筆すべきは、
国の史跡に指定された石鍋製作遺跡は、日本でここだけだということ。
「日本唯一」という言葉が、またも出てきました。

西彼杵半島には石鍋の製作所跡が数十カ所確認されているそうですが、
その中でもホゲット石鍋製作遺跡は最大規模

遺跡の範囲内には、11カ所の工房跡が確認されています。

千年前の「工場」がそのまま残っている

遺跡は、雪浦川上流域の山の中にあります。

写真4:ホゲット石鍋製作遺跡・工房跡

東西約200m・南北約150mの範囲に工房跡が点在していて、現地を歩くと、今でも岩から切り出しかけた石鍋の輪郭や、ノミの跡を見ることができるそう。

特に印象的なのが「第6工房」と呼ばれる場所。高さ約6m・長さ約60mにもわたる岩壁一面から、素材を切り出した痕跡が残っているといいます。

文字で読むだけでも、その規模の大きさに圧倒されますね。

製作工程も面白くて、山の中で荒削りした半製品(ブランク)を川を使って運び出し、仕上げ加工は全国各地で行っていたと考えられているそうです。

千年前の人たちが、山を削り、川を使って、全国に石鍋を届けていた。
そう思って遺跡を見ると、きっとまた違って見えてくると思います。

その物語を引き継ぐ場所「HOGET」

そんな歴史を持つホゲット石鍋製作遺跡の名前を引き継いで、現在も西海市にひとつの場所が生まれています。

それが、古民家をリノベーションしたカフェ兼地域拠点、

〈HOGET(ホゲット)〉です。

場所は西海市西海町川内郷。コンセプトは「ほしいものは、つくる」

石鍋が「うつわ」として人々の暮らしを支えたように、この場所もまた、地域の”場(うつわ)”として機能することを目指しているそうです。

写真5:HOGETのドリンク・スイーツ

カフェではドリンクやスイーツが楽しめるほか、「ホゲットプディング」などのオリジナルメニューも。

写真6:HOGETの雑貨

ショップでは、西海ゆかりのお土産やハンドメイド雑貨なども扱っていて、地域のものづくりを発信する場にもなっています。

写真7:HOGETのレンタルスペース

さらに、ワークショップやイベント、会議などに使えるスペースもあり、縁側や芝生でのんびりできる屋外空間まで整備されているとか。

「おしゃれな公民館」という表現が、なんだかしっくりくる気がします(笑)。

歴史の重みを感じながら、ふらっと立ち寄れる場所。西海市に来たときは、ぜひ訪れてみてほしいスポットのひとつです。

やっぱりすごかった!!西海市!

ゆで干し大根のときもそう感じましたが、
西海市って、知れば知るほど「すごいもの」がたくさんある場所だなあ、と。
今回の石鍋の話でいえば

図2:1000年の時を超える西海市の至宝
  • 日本唯一の国史跡(ホゲット石鍋製作遺跡)
  • 千年前から全国へ届けていた生産拠点
  • その歴史を受け継ぐ現代の場所(HOGET)

これだけの「すごさ」が、ひとつの遺跡に詰まっているんです。
普段は何気なく通り過ぎてしまいそうな場所にも、こんな深い物語が眠っているかもしれない。

そう思うと、西海市を歩くのが、少し楽しくなりませんか?

次回もまた、「知ってみると意外とすごい」西海市の話をお届けできたらと思います!

どうぞお楽しみに。


関連スポット情報


所在地:〒857-2324 長崎県西海市大瀬戸町雪浦奥浦郷
見学:自由(山中の遺跡のため、歩きやすい靴がおすすめです)


所在地:〒857-2303 長崎県西海市大瀬戸町瀬戸西濱郷61−1
ホゲット石鍋製作遺跡に関する資料や地域の歴史を展示。
遺跡を訪れる前後に立ち寄ると、理解がぐっと深まります。


所在地:〒851-3502 長崎県西海市西海町川内郷1138−2
営業時間:おおむね12:00〜16:30(詳細は公式サイト・SNSでご確認ください)
定休日:火曜ほか(シーズンやイベントにより変動あり)
公式サイト:https://hoget.jp/
公式Instagram:https://www.instagram.com/hogetsaikai/?hl=ja

※営業情報は変更になる場合があります。訪問前に公式情報をご確認ください。

画像・図出典

写真1:Didier Descouens – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6655965による
写真2:ColBase: 国立博物館所蔵品統合検索システム (Integrated Collections Database of the National Museums, Japan), CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98411301による
写真3、4:HOGET公式サイトより引用(hoget.jp/about/
写真5、6、7:HOGET公式サイトより引用(hoget.jp
図1、2:NotebookLMで生成し筆者が修正

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