西彼町の国道を柚子の川から平山に登る途中に『あんあん堂』はあります。
入り口にひっそりとかかった看板、ところどころに置かれた陶器の人形たちが訪れた人を出迎えてくれます。
玄関で呼び鈴を鳴らすと奥から「はーい」と優しい声。
今回、西海市西彼町で陶芸をされている『あんあん堂』の安藤健志さん、安藤亜紀さんご夫妻の工房を訪ねました。
私が「あんあん堂」を知ったのは今から15年ほど前、小雑誌に紹介されていたものを偶然見たのがきっかけ。
『西彼に若いアーティストがいる!』
なんだかとてもドキドキしたのを覚えています。
それから色々なご縁が繋がり、今回やっとお会いできる運びとなりました。
ずっと聞きたったこと、不思議に思っていたこと、早速インタビューの開始です。
Contents
【あんあん堂】
安藤健志(けんじ)さん1974年8月生まれ 神奈川出身
安藤亜紀さん1974年5月生まれ 大阪出身
2001年西海市西彼町にて『あんあん堂』始まる。
なぜ、陶芸の道へ進まれたのですか?
私は美大を目指して塾にに通っていたんですが、自分よりも才能ある人が2浪、3浪していて、これはとても無理だという現実に直面したんです。
このまま就職するのは腑に落ちないし、ある日塾で粘土の作品を褒められたことにピンときて、やきものをやってみようと思って学校を探したんです。
高校の修学旅行で体験した備前での陶芸が思いのほか上手く作れて、冗談で友達に『将来陶芸家になるわ』と話していたことが現実になったわけですけど(笑)
学生の時に見た雑誌に若い人が陶芸をやっている話が載ってたんですよ。それを見て「ああ、それもいいかな」と思って。
【ものづくり】をやりたかったんでとりあえず陶芸をやってみよう!だめなら違う道に進んでもいいし。
それから陶芸について何もわからなかったんで学費の一番安い学校を探したんです。それが佐賀の【窯業大学校】でした。
二人とも『陶芸家になろう!』と思ってなった訳じゃなくてそこの辺りがあやふやなんです(笑)
なるほど。きっかけってわからないものですね。
でも今に続いているということは、お二人とも根っこのほうでは【ものづくり】に対する思いがしっかりとあったんですね。
学校卒業後は修行をされたんですか?
学校を卒業してからめちゃめちゃ勉強しました!(笑)
嬉野の窯に一年半、それから有田の李荘窯(りそうがま)に四年。
李壮窯で働くうちに『やらなきゃいけない』と思ったんです。
そこで【やきもの】の面白さに気づかせてもらったんですよ。
夜、絵付けの勉強をしたり、家では人形を作ったり、絵を書いたり、仕事以外でも自分の作品を先輩に焼いてもらったり。
『やりたい!』という気持ちがふつふつと湧いてきて。もう夢中でしたね。
李壮窯は亜紀さんにとっての陶芸家人生のターニングポイントだったんですね。
そうですね、器に絵付けするのは難しいですが、やればやるほど熱中できて、休み時間も絵付けを教えてもらったり、そこで働いていた方達も本当にいい方ばかりで、有田という土地はすごく自分に合っていたんです。
でもご自分たちの窯を持ったのは有田ではなく西彼でしたね(笑)
なぜ西彼を選んだのですか?
とても不思議に思ったんです。なぜ『やきものの町』ではなく何のゆかりもない西彼で窯を持とうと思われたのか?何か理由があったんでしょうか?
はい、実は二人とも旅好きで、「いつか独立したいね」とあちこち旅をしながら土地を探したりしてたんですよ。
もちろん有田でも物件は探していたんです。
たまたま206号線においしいソーセージ屋さんがあるという話しを聞いてこちらに来たんです。それが『雪の浦ハム』さんでした。
雪の浦ハムさんのお店ではいろんな作家さんの手作り作品を展示販売していたので、自分たちの作品も仲間に入れてもらったり、とてもよくしていただいたんです。
それがきっかけになって、いろんな作家さんと知り合いになったし、繋がりもできたし「いいところだよね」という話しになりました。
本当ならいい土のあるところで窯を持つのがいいんでしょうけど、かえって関係のないところが影響を受けなくていいんじゃないかな?
有田とかなら繋がりもあって、やりやすい部分もあるだろうけど、逆に自分たちが埋もれてしまうんじゃないかと思ったんです。
今の時代、土は自分で買うこともできるし、やきものの町にこだわらなくてもいいかなと思って。
トントンと家も見つかり、雪の浦ハムさんを介して知り合ったコスモ建設さんや岳野ぶどう園さんが町内にいるという安心感も後押ししてくれて、わりとすんなり西彼町に来ることが決まったんです。
私自信は窯業大学校時代に佐賀から西彼まで一人自転車で来たことがあるんですよ。
え!! 自転車で?? 佐賀から西彼まで??
すごいチャレンジャーですね!
あはは。 オランダ村やバイオパーク、七ツ釜鍾乳洞とか観光しましたよ(笑) でも一番は食べ物が何でも美味しくてビックリしたことですかね。
大阪にいたときはお刺身が食べれなかったんですが、こっちのお刺身を食べたら美味し過ぎて食べれるようになりました。
いろんなところに行ったけど、西彼に来るようになってたのはその時からの巡り合わせですかね。
その土地に住むんですから食べ物が美味しいかどうかは重要問題ですよね。
西彼の食べ物が美味しくてよかったです(笑)
次回は『あんあん堂』の作品や、作り手の想い、これからの目標などを聞いていきたいと思います。
お楽しみに。
※現在【雪の浦ハム】は長与町に移転しております。