5月に入ってから、伸びた髪の毛を結ぶようになった。
ギリギリ結べるくらいの長さである。
私は髪の毛の長さのサイクルがあり、冬場は短く、夏場は肩につくくらいまで伸ばすようにしている。
汗をふんだんにかく仕事の上に帽子を被るゆえ、夏は短くするよりも、返って結んだ方が首辺りが熱がこもらずに良いからである。
冬は寒いので、髪の毛が長いと洗った後に乾かすところがなかなかに時間がかかってイライラ!
ドライヤーで乾かすも、濡れた冷たい髪がピタピタ顔に当たるのも『チッ!』っとなる。
「髪の毛長い方が首元があったかいじゃん」というご意見もあるが、私は日々の手入れに重きをおいているので、
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そんなん首巻き(マフラー笑)しときゃ~問題ないじゃ~ん!
とか思う。
さて、そんな感じで毎日髪を結んで仕事をしている私だが、長さがやはり少々短い。ちょっと硬い髪質の私が短い髪を結べば
後頭部に竹ぼうきが刺さってる風なバックショット。
期間限定のレアショットである。
更に後ろまで届かないサイドの髪が動いているうちにハラハラと落ちるし、汗をかけば地肌に髪の毛がはりつくし、仕事用の帽子を取るとそこに
『生まれたての落ち武者』が現れる。
地肌にペッタリと張り付いた髪はまるで『生まれたて』の赤ちゃんのよう。そして何と言ってもサイドの髪のザンバラ加減はまさに『落ち武者』。
無造作ヘアーと言えば無造作だが、無造作にもほどがある。
仕事終わりの午後5時ともなれば、私の『落ち武者ヘアー』は完璧に仕上がるのだ。
その姿でスーパーウエストに行くのだから、絶対に周りのご婦人達は私の『生まれたての落ち武者ヘアー』にクギ付けのはず。
お忍びで来た芸能人のよう周りを気にしつつ、コソコソと店内を徘徊。
暑い日なんかは汗でますます髪が地肌に張り付くもんだから、ぺったり髪だけでもどうにかできないかとワシャワシャ手ぐしでエアリー感を出してみたりするのだが、その努力も虚しく、やはり落武者は落武者である。
恥ずかしいヘアースタイルをご披露しながらの買い物はいたたまれないものだ。
なのに、そんな日に限ってメニューが決まらず、グルグルと『ウエストジプシー』をしなくてはならない。
あぁ、『落ち武者ヘアー』じゃなかったら・・・。
なにしろ『落ち武者ヘアー』をなんとかしたい・・・。せめて汗でペッタリ張り付く髪をなんとかしたい。
そうだ!美容室にいこう!
今は便利な世の中になった。美容室のネット予約が出来るのだから。そういえばメールが来てた!
30%OFF!!
美容室の30%OFFは、金額が大きいので心がざわつく。それはもう、美容室に行け!という天からの思し召しのほかない!
私は貰ったばかりの5月のお給料を握って、パーマを掛けに出掛けたのである。ホントはお給料の行き先はほぼ決まっているが、しょうがないじゃないか!天の思し召しなのだから!
私の『生まれたての落ち武者ヘアー』からの奪還の方が何倍も何十倍も大事だ!クルリンクルリンかわいくパーマをかけてもらって、帽子を取っても『生まれたての落ち武者ヘアー』にならないようにする方が誰が何と言おうと大事だ!
そして私は数日間のおかず代と引き換えに、クルリンクルリンパーマをかけたのだった。
私が通う美容室は、ヤングな美容室でヤングな美容師さんがたくさん働いている。自分の子どもくらいの年頃であろうヤングな美容師さん達と私は何を話せばいいのだろうか。
年に数回しか利用しない美容室だが、私には少なからず毎回頭を悩ます問題である。
今回担当してくれた美容師さんは、アイラインがググッと跳ね上がり、赤いリップが効いたメイク。中折れハットにタイトスカートのイケイケファッション。
・・・・・・・。
ねぇ、アラフィフのお母さんはあなたと何を話せばいい?
結局今回も会話のキャッチボールが上手く続かず、居眠りのフリでその場をしのいだ住子であった・・・。
無理して頑張ったところでヤング達とのジェネレーションギャップは消えないのだと悟った私は、自然な居眠りのやり方を極める方向で進めようと決めた。
おかげ様でそんなヤングな美容師さんによるパーマの施術で私の『生まれたての落ち武者ヘアー』は終わりを迎えたのであった。
剛毛による、バックショットの『竹ぼうき』はもう存在しない。代わりにクルリンクルリンのカールが効いた柔らかふんわりかわいい住子が誕生した。
私は『生まれたての落ち武者ヘアー』から無事卒業したのだ。