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【ウエストのおんな(第4話)】~西彼在住アラフィフ主婦とその日常/スピードラーニング~

スピードラーニング

私は海近住子(うみちかすみこ)。西海アラフィフパート主婦である。

 

私がこの西海市西彼町に嫁いでもう23年。

「住めば都というけれど、なかなか都にはならんわ」と愚痴りながら22年。

結局、知らず知らずに『都』になっていたのかもしれない。

時間というものは恐ろしいものだ。

 

旦那と知り合ったのはそれから3年前の話しで、26年前になる。

 

あぁ、思い出す・・・。

 

あの日、21年間生きて来た中で5本の指に入るくらいの衝撃を受ける事件が起きた。

それは初めて旦那と会話をした時だった。

 

『ねえ、なまってるよね・・・。』

 

21歳の私がどれだけのカルチャーショックを受けたことか!

「なんで同じ長崎県なのに なまりがあんの?」

 

 

とにかくイントネーションが違う!

会話の波の上下するポイントが長崎人の私とまるで違うのだ。

 

 

そう『西彼弁』。

 

ところで、話しは変わるが『スピードラーニング』という言葉をきいたことがあるだろうか?

あのゴルフプレーヤーの石川遼選手が英語力を得るために実践していた英会話教材のことである。

その教材とはCDを聞き流すだけで英語力がつくというもので、CDには普段アメリカ人が話すスタンダードな会話がナチュラルスピードで入っており、繰り返し聞くことで英語の音に慣れ、聞き取りができるようになるというものである。

 

私は旦那と結婚した23年前から 毎日ずっと聞き流している。

CDではなく、生の音声を。

ネイティブな発音、そしてナチュラルスピードでの会話。

 

そう『西彼弁』。

 

当時はまだ西彼弁の聞き流しを始めたばかりにも関わらず、義父とワンランク上の会話を実践しなければならない時もあり、なかなかハードなものだった。

意味がわからない単語(方言)が出て来た時には、先生(旦那)に通訳をしてもらったりして、『スピードラーニング西彼弁講座』で西彼弁をマスターし会話力をつけていった。

 

勉強の場は家の中だけではなく、ウエストに出かければ生きた西彼弁を学ぶに最適な場所に変わった。

ウエストは聞き流しの宝庫で、ご婦人達の生の声が聞き放題、そして立ち話しは最高の実践タイム。

おかげでかなり単語(方言)も覚えることができ、ネイティブな発音で西彼弁を話せるようになったのである。

 

私が長崎市から嫁に来たと知らない人は、すっかり西彼のジモティーだと勘違いするくらいのクオリティーまで達したと思った。

ウエストで親戚のおば様にバッタリ会った時も、ものおじすることなく会話ができた。

 

もう完璧!

 

私の西彼弁は、完成されたに間違いない!

これは言い方を変えれば

 

なまってる。

 

そう。私はすっかりなまったのである。

これは私が会話しているところをもし西海市外の人が聞いたら、25年前私に起こった衝撃の事件と同じことになる。

なんとも皮肉なものだ。

 

しかしそんな中、新たに衝撃の事実が明らかになった。

 

完璧だと思って疑わなかった私の西彼弁が、まだまだひよっこだったということが今になって判明したのだ。

西彼に嫁いで23年、ずっとずっと聞き流してきたのに、自分のものにはなってなかった。

生まれも育ちも西彼っ子の正真正銘のジモティーが目の前に現れたのだ!

まじかに聞く彼の西彼弁はそれはそれは流れるように美しく、いまだ聞いたことのない単語(方言)が次々に出てくるではなか!

西彼弁・・・奥深い。

私は自分が完璧だと思っていたことが恥ずかしくなった。

 

この事実を知ってしまった以上、私は『スピードラーニング西彼弁講座』に終わりがないことを悟った。

これからもウエストでの自主練習はさらに続く。

真の西彼弁の使い手をめざして!

 

こんな私を今日もスーパーウエストは優しく受け入れてくれる。

次回「ウエストのおんな第5話」はこちらから

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