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【ウエストのおんな(第5話)】~西彼在住アラフィフ主婦とその日常~/ありがとう ウエスト。ありがとう割引シール。       

ありがとう ウエスト。ありがとう 割引きシール。

私は海近住子(うみちかすみこ)西海アラフィフパート主婦である。

最近、春だというのに夏並みの暑さが『家政婦は見た』の市原悦子ばりにチラチラ顔を出すから、太陽の光を浴びてしまう仕事をしている私は・・・

 

シミが怖い。

 

からだが気温の変化についてけない。

 

疲れがとれない。

 

アラフィフだから。

 

 

もう少し春めいた穏やかな日々を感じながら過ごしたい。

そして徐々に気温の上昇に体を慣らし、万全の体制で夏を迎えたい。

なのにやはり異常気象なのか、市原悦子が走ってやって来た。

 

市原悦子 落ち着いて! 急がなくていいから!

 

仕事を終え、だるいからだをなだめなだめ今日もウエストへ向かう。

時間は午後5時を過ぎたところ。

この時間にウエストへ来る西海主婦なら当然知っているであろう。

 

割引シールぺたりタ~イム!!!

 

店員さんがおもむろに割引シールを手に持ち、惣菜コーナーへ向かう。

惣菜を確かめながら、現時点で割引シールを貼れるものだけをチョイスしてぺたりぺたりと貼っていく。

私は横目でチラチラ様子を伺うが、まだこの時点では3割引きシールなので普段なら早々に手を出すことはない。

なぜならもう一段階上の半額引きという私が愛して止まない割引シールがあるからだ。

しかし こう暑くなって、晩ごはんを作ることに気力と体力とやる気のどれかが欠けた時、私の中の『ごはん工場の晩ごはんおかず製造ラインのブレーカー』がストンと落ちる。

結構早めにストンと落ちる。

 

そうなると、考えていたその日の晩ごはんのメニューもあっさりと却下になり、半額引きでなくても割引シールが貼られた惣菜に照準を合わせ、その日に最適な惣菜の物色を行うこととなる。

しかし仕事を終え、ウエストの惣菜コーナーにたどり着いたのは私だけではない。

きっと私と同じように『おかず製造ラインのブレーカー』が落ちてしまった西海主婦が、割引シールの貼られた惣菜を狙って惣菜コーナーを2重3重に取り巻いているのだ。

 

このままでは負けてしまう!

 

焦る! あの『おかず盛り合わせ』が無くなってしまう!

『おかずの盛り合わせ』さえ手に入れば、かろうじて動いている『ごはん工場の汁物製造ライン』で味噌汁さえ作ればいい・・・

そう! 今日の晩ごはんを作るというミッションは高レベルでクリアなのだ!

 

これは負けられない!

 

『おかず盛り合わせ』の前に立ちはだかる西海主婦たちを上手くかわし、狙った獲物を狩るかのごとく私は『おかず盛り合わせ』に手を伸ばす。

 

よし!上手くいった!

 

と思ったのもつかの間、私の『おかず盛り合わせ』は品の良いひとりのご婦人が品よくご自分のカゴの中へと収め、殺気立つ惣菜コーナーから何事もなかったようにするりと離れていった。

 

あぁ・・・生きていくって、厳しい。

私は人生の厳しさを身をもって経験したのだ。

かろうじて繋がっていた『ごはん工場の汁物製造ライン』も、その瞬間にブレーカーが落ち動かなくなってしまった。

 

その日の晩ごはんは、その後どうにか手に入れた別の惣菜とインスタントの味噌汁が食卓に並んだ。

 

あぁ、今からこの調子でいいのだろうか?夏本番が来た時、果たして我が家の食卓はどうなるのだろうか?

想像はついている、きっと果敢にも惣菜コーナーで毎日戦いに挑み、攻めに攻めているだろう。(そんな元気がありゃ、ちゃんと晩飯作れよ。とか思ったり、思わなかったり。)

 

ときには勝ち、ときには負け、私は日々成長をしていくのだ。

 

ありがとうウエスト。ありがとう惣菜。ありがとう割引きシール。

 

そんな私を今日もスーパーウエストは優しく受け入れてくれる。

次回「ウエストのおんな第6話」はこちらから

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