内閣府が進めている”働き方改革”。そんなの大企業だけでしょ、というイメージもあるかと思います。
本来、「働き方改革」は人口減少対策や、育児介護等との両立ができる働き方を目指したもので、決して企業のものだけではありません。
働く人だけでなく「今は就業していないけど”何か”をしたい」という気持ちがある人に、大いに関係のあることなのです。
西海市で、2016年度から毎年行われている『新しい働き方講座』という企画があります。子育て中だったり、まとまった時間がとれなくて働けない・・・という人達のために、自宅にいながら働くことができるようにスキルを身につけようという講座です。今年から『Saikai Academy』という名称がつきました。
今回は「新しい働き方」への取り組みについて紹介します。
過去に開催された模様はこちら↓
2018年度は、西海市広報での募集に応募した23名の参加者が、ライティング講座、スマホ動画講座、写真講座、ワークショップ運営講座、SNS活用講座、Webページ講座というさまざまなカリキュラムを学びました。受講者は、主婦、会社員、自営業者の方など、いろいろなバックグラウンドを持った方々です。
「新しい働き方講座『Saikai Academy』」。
どういった取り組みなのか、企画者の宮里賢史さんに話を聞きました。
宮里氏の名前を聞いたことがある人もいますでしょうか。そう、このメディア『ばりぐっど』の編集長でもあり、記事にもたびたび登場しています。
企画者 宮里賢史さんにインタビュー
「Saikai Academy」ってどんなアカデミー?
――「新しい働き方講座」とはどういう企画なのですか?(以下敬称略)
宮里「子育て世帯、女性の方々にどういう仕事を作るかという課題に、主に在宅ワークが多くなりますが、仕事のスキルをお伝えする講座です。西海市の地方創生事業です。」
――宮里さんが発案されたのですね。
宮里「西海市は地理的に分断されています。でも家にいてもできる仕事はけっこうあるなと。私は過去にデザインの仕事などを、県外の人と一緒にやっていました。市内のチームで何かできないか?と。コミュニケーションも速いし、と。それが最初の思いつきでした。」
――この企画の目指すところは?
宮里「新しいことやるのって一人だとモチベーションキープするの大変。でも誰かと一緒にやっているとできます。講座が終わった時、そこで出会った人たちがクラスというかチーム、仲間になれることも目的だったんです。アカデミー形式とした理由です。」
インターネットを使った働き方は、就業時間を自分で決めやすく、「新しい働き方」にはとてもフィットしています。
ネットでつながるさまざまな人たちを相手に、営業・コミュニケーション・受発注・納入までの全ての流れをインターネット上で行うことを『クラウドソーシング』といいます。そうした仕事のやりとりの場を提供するランサーズ、クラウドワークスなどの企業の登場もあり、ここ数年で広がってきました。
「Saikai Academy」ではクラウドソーシングの利用を念頭に置いたカリキュラムが多いですが、そこをあえて『リアルな仲間作り』とセットでやる、というのがポイントのようです。
――1年目はクラウドソーシング・ライター講座、2年目はライター中級講座だったのですね。3年目はちょっと変わって写真やSNSなど多岐にわたるカリキュラムですが、科目の幅を広げている狙いは何ですか?
宮里「最初はライターに集中した講座だったんですが、そのうち他のいろんなことが得意な人が現れて、デザインもやりたい、写真もやりたいとなったためフィールドを増やしていって、チャレンジできるようにしました。というのも、『イイ文化のまち』を作りたいと思っていて。誰かが何か新しいことをやりたいなと思ったら、周りの人がそれを尊重して『いいね!』と言ってくれるようなカルチャー。」
――どの講座もITを活用したスキルですよね。
宮里「西海市とITの相性はいいと思います。バラバラなところに住んでいる人たちが一個のプロジェクトをやろうと思ったら、そもそも在宅ワークじゃないとできないですよね。それをクリアしないといけないという緊急度が他の地域より高かったんですね。」
(講座中、PCを活用しています。)
アカデミー卒業生は新しい働き方をできている?
――3年目までの成果は出ましたでしょうか?
宮里「受講者の方々がスキル的に成長されて、今『ばりぐっど』をやっています。メディアとして、記者や編集部の人たちが自立して企画を行うようになっていたんです。仕事として収入にもつなげることができてますし、また、今まで子育てだけだった人たちなどの居場所になっているという声もいただいています。
そしてSaikai Academyとばりぐっどの取り組みがシェア・ニッポン100(内閣府がまとめる地域経済事例)に選出されたんです。うまくフィットしてひとつの経済を作っていますと思ってもいいかなと。」
――ここまで来るのに難しかったことは?
宮里「企画当初は、「西海市には根付かない」と言われていたので(笑)。だから、まずは新しい働き方の未来を信じてくれる人たちをふやすことを頑張ろうと思いました。」
――「Saikai Academy」は来年もやりますか?
宮里「未定です。やるとしても、いろいろなスキルの要望があると思います。一人一人違う分野がやりたいっていうのが当たり前だと思うので、そういう要望を聞いて考えたいです。」
過去の講座卒業生はフリーランスとして自立した方もいるそうです。また、卒業生の有志がばりぐっどに参加し、Webに関する勉強会の企画や「ポケットマルシェ」など農家さんとのコラボレーション企画を行っているのです。
ばりぐっど編集部のデスクの一角に、コラボした農家さんのお野菜が・・・!
インターネットを使って、またそれだけでなく現場でのリアルなつながりも生みながら、新しい働き方に踏み出すという西海市民の”働き方改革”が始まっています。