ようこそ、レコードを楽しむための大人時間へ。ばりぐっど編集部大崎支局のベーヤンです。

第2章は今では生産されなくなったスタンダードプレイ(SP)レコードの話でした。悲しい歴史の秘話がありました。

 

実物のレコードを知らなくても「レコードは何色?」と聞かれたら、固くて丸くて黒いものを思い浮かべる方が多いと思いますが、実はとてもカラフルでやわらかいものもあります。

 

 それが『ソノシート』と呼ばれるレコードなんです。

 


 

昭和30年代から生産され、子供たちに愛された青や赤のカラフルで半透明なレコード。1958年(昭和33)にフランスのレコードメーカーで開発された塩化ビニール製のレコードで、一般にはフォノシート・サウンドシート・シートレコードなどと呼ばれていました。日本では朝日ソノラマの『ソノシート』という呼び名が浸透しています。

 

とにかくペラペラで薄くやわらかく軽いのが特徴で、片面プレスでしたが量産できました。音質的には、ノイズが出たり劣化が早かったりしたのですが、安価で割れにくいので運送にも適していました。

 

 

日本では1959年11月にコダマプレス刊が『歌う雑誌KODAMA』、12月に朝日ソノラマが『音の出る雑誌・月刊朝日ソノラマ』を、雑誌とレコードの組み合わせで発行しました。

今では雑誌にCD,DVD、バックや化粧品、プラモデルなどいろいろ付いてきますが、昭和30年代に雑誌にレコードを付けるという画期的な方法がすでに実践されていたのです。軽くやらかいソノシートならではの特徴が大きかったと言えるでしょう。

 

 今へと続くアニメソングのさきがけもソノシートでした。

 


 

 

当時は番組を自宅で録画したり、ビデオをレンタルしたりできなかったので、子供番組やアニメ番組の挿入歌などは、テレビの前でメモを取りながら覚えたものでした。

 

日本のアニメソング第一号は「鉄腕アトム」で120万部の増版だったそう。それを一手に担ったのが量産出来るソノシートでした。このレコードがどんなに子供たちに愛されたがわかります。ここから国産のアニメソングのレコードが、現在へとその世界を確立していきます。

 

時を同じくして、海外ではビートルズがいち早くソノシートを使ってファンクラブ向けのクリスマスメッセージを7年間に渡って製作しました。

 

 

また1970年~80年代になると、学年誌はペーパークラフトのレコードプレーヤー(手回し式蓄音器に近い仕組み)とソノシートを付録として出し、このセットは1991年まで続けられました。子供でも作れ、電気も使わず、紙コップやハガキでも音がなるなど代用品でも使える仕組みがアナログのいいところでもありますね。

 

TV主題歌や子供番組、ウルトラマンなどの怪獣の声や、絵本などソノシートが付いた雑誌が数多く発売される様になります。

 

 

ソノシートは子供向けだけでなく音楽業界、食品業界でも使われました。音質はいいとは言えませんが、アイドルのブロマイドに会話などを入れた『ウイスパーカード』やパソコン雑誌PiOの付録、レコード店で視聴用や予約特典でもらえるものもありました。

 

ソノシートの悲しい宿命は劣化が早いこと、折れたり傷ついたりしてしまうことです。2005年にソノシートは製造終了となってしまいました。

 


 

 

今ではソノシートの名前さえ知らない世代の方でも、スピッツや長渕剛はご存知ですよね。子供向けだけでなく、今も活躍しているアーティストもソノシートを出しています。

サカナクションも四角いソノシートを出しました。

昭和のソノシートは他の媒体には発表されていない音源も多く、今のうちに聴けるものは聴いておきたい貴重なレコー道の逸品でもあります。

 

 

 

これは個人秘蔵の「声のえほん」

絵本に封筒みたいな紙袋が1ページにくっ付いていて、中に直接赤いソノシートが入っていました。残念ながら今はソノシートがなくなっています。
この中の歌は40年以上経っても兄弟みんな歌え、幼い兄弟や部屋の空気までよみがえってくる……小さなタイムマシーンの様な一冊なのです。

そう言えば、ソノシートはレコードプレーヤーの針が傷む!と嫌がる大人もいました。

時代はもうカートリッジ式の宝石針で聴く新しいレコードの時代には入っていました。それはまた、次の大人時間で。

 

 

 

 

西海市大瀬戸 やすらぎ交流拠点施設音浴博物館には、もちろんソノシートもあります。

 

もしかしたら、貴重な一枚が眠っているかもしれません。

半透明でペラペラなフランス生まれの可愛いレコードを、ぜひ実際に触ってみてください。