こんにちは!ベーヤンです。今回は3ヶ月に渡って個展の準備から最後まで見届けた岡本泰彰氏の舞台裏のお話をお届けします。
昨年秋、西海市出身の芸術家『岡本泰彰展~西の海で魚群と再会~』は、初めて尽くしで幕を閉じた。
ニューヨークを拠点に活動している芸術家岡本氏の初の故郷での個展。
西海市大島文化ホールを丸ごと使い、新型コロナウイルス対策も鑑みての一方通行の展示方法は、岡本氏の世界への演出効果にもなった。
舞台には制作中の大作を展示し、タイミングが合えば岡本氏が、作品を描いているところも見られる楽しみもあった。
また、西海市の若手アーティストたちや、地元の施設とのコラボレーションも初の試み。
大ホールのステージに高さ1.8m横6.5mの制作中の作品を展示し、この日のために作られた「ヤマダケンタ氏」による水中にいるかのようなサウンドが空間を包み込んだ。
初めてのことがぎゅっと詰まった9日間は、西海市内外から約2000人の来館者を記録した。
5月、ニューヨークかベルリンにいくかもしれない岡本氏だったが、コロナでしばらく滞在するということで西海市文化協会の会員になった。
コロナでいろいろなイベントが無くなる中、展示ならなんとかなるのではないかと計画していた文化協会事務局と、岡本氏がニューヨークの画廊で学んだ経験を活かせば、美術館でなくても絵の展示ができると話がすすみ10月の個展に向けて始動した。
すでに、佐世保市や長崎市で個展を開いていた岡本氏への注目度は高く、予定していた作品の完成度が危ぶまれるほど各メディアの取材の予約も次々に入っていった。
そんな中で、岡本氏がまず力を入れたのがフライヤー配布。文化協会が普段作成する枚数の倍の枚数を希望した岡本氏。それは「西海市中の子どもたちの手元に確実に届くため」だった。
こういった案内は広報誌と一緒に西海市全世帯に配布するのだが、岡本氏は「広報誌を手に取るのは大人。子どもが市報を見る機会は少ないから直接届けたい」そんな思いからだった。
なぜ子どもたちにこだわるのか・・・
そのひとつは、芸術家本人が亡くなってから、認められたり作品が世間に紹介されたりすることも多い中、今現在、こだわって自分の作品を生み出している現代アートという「生き方」を見せる人がいることを知ってほしいから。
ニューヨークや海外で出会った人たちは、「自分もなかなか会えない」まさにそういう人たちだったそうで、大都市なら見られる機会は数多くあるが、そういった人の芸術作品は地方に行くにつれほとんどみられない。
だからこそ、子どもに刺激になるだろうと思うし「こんなこともできるんだよ」という展覧会にしたかったのだ。
岡本氏の狙いの様に、子どもたちは目をキラキラさせながら作品を見ていった。保育園児や学童保育の子どもたちも、時間をとって見に来てくれ、岡本氏とふれあい記念写真をとり楽しそうに過ごしていった。
「あっちからもこっちからも質問がきて、まるで聖徳太子のようだった・・・」と、あとから岡本氏が笑いながら語ってくれた。
もうひとつは、自分をニューヨークで応援してくれるベテランの芸術家のように、文化をつなぐために下の世代を育てることも大切だと考えるから。今の自分にできることが地元で行うこの展覧会であった。
『絵を描く事ってなんだろう』と自問自答してきた岡本氏。
子どもの頃、血管や皮膚や骨があるのが不思議だった。生きている存在って何だろう?と、考えていくうちに生き物の生態・進化へと想いは続き・・・そして宇宙へと広がり続けた。
美術とは?描く事とは?イコール教育だと思ってきた。そして海外での経験の中ででた答えは・・・『描くことは生きる事』だと岡本氏は語る。
魚群と再会へ込めた想い
縁あって「DEAR LANDLORD」が西海市文化協会の冊子「つんなむ」の表紙になったので、西海市と関連づけて魚の絵の展示をしようと思っていた。
帰国してから、直に魚の情報がどんどん入ってくるようになった。
いままでは作品を描くのに、自分から動物園へ足を運び、本やネットなどで気になったものしか調べなかったが、こちらが求めていなくても魚の情報が向こうからやってくる西海市。
『伊藤若冲の魚群図』のような、魚といっぱいあえる作品にしようと決め、個展のための作品制作に入った。
その魚たちは、日常の遊びや食卓で子どもの時の自分が昔も会ったはずの魚たちなのだ。
ふるさとである日本の西の海でまた再会したそんな意味を持って「西の海で魚群と再会」とした。
まさに、岡本氏が地元で開いた個展は、ふるさとへの想いと、子ども時代のノスタルジーを感じずにはいられない個展だったのだ。
9日間在廊中、多くの市民と記念撮影や作品説明など気さくに笑顔で応じた岡本氏。一度会うとその作品だけでなく、岡本氏本人に魅力を感じた人も多かったのではないだろうか。それは県内外から、岡本氏とその作品に会いにきた多くの知り合いや来場者数からも見て取れる。
先にもふれたが、岡本泰彰展の様子はテレビ・新聞・雑誌など長崎県下のほぼ全てのメディアで連日紹介された。今なお、引き継ぎ撮影を続けているメディアもあるほどだ。
西海市出身の若き芸術家岡本氏は、多くの子どもたちや若きアーティストたちとふれあい、コロナ禍の中でもたくさんの感動と笑顔を残してくれた。
個展を終えての感想は
「楽しかったし、開催できてよかった。後、美術館ができたらいいな。西海市に文化が根付いていくためにも、興味がある人が触れたいときにふれられるためのもの。過去に寄贈されたり、所蔵品などを展示したり地元のひとの作品が出せたりするようなそんな場所が必要」とのこと。
「これからも西海市の文化発展のために力になりたい」と心強い言葉も残してくれた。
準備中の真剣な岡本氏やスタッフにみせるおどけた顔だけでなく、取材の前に台本を読み返すちょっぴりナーバスな様子もまた魅力だった。
岡本泰彰展の様子は西海市文化協会や岡本泰彰氏のホームページから見ることができる。もう一度、岡本氏の思いをたどりながら楽しむとまた面白い。
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今後の岡本氏の活動は2月に予定されている長崎市ピースミュージアムでも見ることができる。また違った岡本氏の作品に会えるのが楽しみである。
以上ベーヤンでした。
世界の様々な ”痛み” をテーマに描かれた作品展(別紙参考)。戦争、内乱、核兵器、乱獲、密猟、自然破壊、海洋汚染などから着想を得て、 絵に込めた作品群。作家が作品に込めた想い、 観覧者が何かを感じとってもらえるような発表の場を、 そしてナガサキから世界へ発信できる問いかけの小さくも一歩にな ればと企画し た。 2009年から2019年の間にニューヨークとベルリンで制作された、油彩画、石版 画、ドライポイント、水彩画、アクリル画、 コラージュを大小合わせて約15点を展示。サブタイトル「Pai n Pain Go Away!!」は「痛いの、痛いの、飛んでいけー!」の英訳