令和2年5月、西海市大島町の消防団員の方が春の叙勲で瑞宝単光章を受章されました。
その方は濱野 俊典(はまの としのり)さん(70)。
長年、消防団として勤め上げた功績を評価されての受勲です。
地域の消防団は、私たち市民の生活を守ってくれているありがたい存在です。とても身近でありながらも、仕事内容やふだんどういうことをしているのかってあまり知られていないですよね。
今回は、広報誌7月号の「ばりぐっどな人」にご登場いただいた濱野さんのお話を、少し長めにご紹介します。
【プロフィール】
大島町在住の濱野俊典さん(70)。23歳で当時の大島町消防団 真砂地区分団に入団し、地域の消防防災活動に従事。69歳で消防団引退。令和2年春の叙勲で瑞宝単光章を受章。趣味はコーラス。
消防団のお仕事を聞かせてください!
濱野さんは、大島町の出身。地元で就職したことがきっかけで消防団に入団したとのこと。大島炭鉱は1970年に閉鎖されましたが、当時はその炭鉱関連でにぎわっていたのでしょう。
濱野さん(以下敬称略)「23歳の時に大島の炭鉱関連の会社に就職したのです。池島炭鉱の関連会社で、コンベアーや炭坑内で使う部品の製作をしている会社でした。私は営業担当でした。
それで、その会社の社内の消防団に新入社員はみんな入ることになっていました。
会社が一つの分団を持っていたんです。会社に団があるので、地域に火災が起きたら職場に連絡が入って、みんなで急いで出動していく、というような具合でした。
火災現場にかけつけて消火活動をします。消防団は機械班、警備班、給水班など5つくらい班があって、それぞれ担当が決まっているんです。
私は機械班でポンプ操作を担当していました。ポンプを水源につないでホースに水を送る役です。
ポンプ操作は後方で行いますから、防火服は着ません。消防団のはっぴを着ていました。もちろん、火元に放水する給水班の人たちははっぴの上から防火服を着て活動します」
――消火活動以外にはどんなお仕事があるのですか?
濱野「現場では、救護活動も行います。あと行方不明者の捜索も行います。怖くないかって? それよりも『早く見つけてあげたい』という気持ちでした。見つけてあげられなかったこともあって、それはとても残念でした。
あとは月に一回みんなで集まっての定例訓練があります。水路の点検や、操作方法の訓練ですね。
あと行事として春秋の防災週間、歳末夜警、年明けには出初式を行います」
西海市の出初式は毎年1月8日!
濱野「出初式は毎年1月8日に西彼総合体育館とグラウンドで行っています。これは日にち固定なので毎年同じ日です。
出初式では式典とポンプ操法演技、市中パレード、放水訓練をします。消防車は7~10台くらい各町から出ます。」
――消防車がたくさん来るんですね! 子供たちに大人気でしょう。
濱野「それが、1月8日は始業式の日だったり、平日であまり人が集まらないこともあるんですよね。また市中パレードも距離が短いですし……。
でも皆さん来てくれると嬉しいです。
今年はもう引退していたんですが、昨年の出初式には私も参加していました。
隔年で、長崎県の「消防団ポンプ操法大会」というのがあるんです。県内の消防団が集まってポンプ操作を見せ合い、操作の姿勢やタイム、放水の角度なんかを競うのですね。
その大会に一昨年、参加したんです。そしてそのときのチームで昨年の引退前最後の出初式に出られたのが本当に良い思い出です」
消防団員にも高齢化が押し寄せている
濱野「実は今は団員も高齢化して人数も減ってきています。
会社の分団に入っていたころは職場からみんなまとまって出動することができましたが、今はバラバラに出動しますからね。前の方が行きやすかったでしょうね。
全体的に団員が不足してきている面があります。
でも、大事な仕事なので何とか確保していってほしいですね」
消防団引退後も、引き続き地域を支える顔に
濱野「消防団の引退は昨年の3月です。70歳になる前に区切りとして引退しました。46年間消防団をやっていたということになります。
今は、前の会社を定年退職した後につきあいがあった伸興テクノス(西彼町)で営業としてまだ働いています。
企業勤めの傍ら、西海市消防委員会の副委員長をしています。消防団の幹部と一緒に、防火週間のことや防災活動のことを話し合ったりします。
趣味で合唱サークル「ハーモニー西海」に入っていますし。
新型コロナウイルスの影響で活動をお休みしていたんですが、平常時は混声合唱で週に一回練習をしていました。
少しずつ再開していきたいですね」
――まだまだけっこう忙しそうですね。
濱野「それに、地区の自治会長もやることになって広報配ったり草刈りもあるし、まだまだ忙しいです(笑)」
消防団員時代も、引退してからも、地域密着で大島町を支えている濱野さん。6月3日に勲章と賞状を杉澤市長からお受け取りになりました。
プライベートでは5人のお孫さんがいらっしゃる濱野さん。「孫はかわいくてたまらない」と言います。
46年間もの間、地域の消防・防災活動に真摯に取り組んでこられたこと自体が素晴らしいことです。お孫さん達にとってもきっと自慢のおじいちゃんであることでしょう。