ラフに決めたヘアスタイル、「あ、この人体育会系だ」と一目見てわかる爽やかでスポーティな雰囲気。
初対面でのインタビューにも関わらず開口一番いきなり一人で爆笑するという、おちゃめな一面を見せた西泰裕氏。西さんは、西海市商工会の職員です。本シリーズ前回の山田さんからの紹介で、ばりぐっどインタビューにご登場いただきました。
今回は、ビジネスバッグの中身からひも解く西さんの物語です。


「持ち物」や「ハマっている物」を見るとその人の価値観や人間性が見えてきます。西海市のさまざまな分野の第一線で活躍する方々に、所持品や宝物などの「物」を通してその人の人生観を聞いていく企画、第二弾です。


【プロフィール】
西 泰裕(にし・やすひろ) 長崎市琴海形上町在住、西海市商工会職員。
長崎市出身。東京で大手食品会社の営業職を経て、Uターンして商工会に就職。西海市内の企業の経営相談やサポートを行っている。
一児の父。趣味は釣り・読書・バイク。

 

商工会の職員「経営指導員」とはどんなお仕事なのですか?

「転職活動で僕が応募したときも”経営指導員”って名前で募集があったんですけど、名前がおもしろいじゃないですか?(笑)

と、いきなり笑い始めた西さん。聞けば、「この名前によると、経営を指導するんですよ、本物の経営者の方々に。そんなおこがましい名前!と思いました(笑)。実際は、”指導”というより”相談”くらいです。」

「商工会ではいろんな仕事をしています。何をやるかっていうと、融資の相談や、お祭りの企画、経営相談全般です。
グルメロケや、テレビの生放送にちょっと出たりもしました。特産品を会員事業所さんと企画・商品化したこともあります。西海市で企業が動いているときは、裏で商工会が動いているかもしれませんよ。

よく笑いかなり明るいお人柄の様子。「物」の語りが楽しみです!

カバンの中を拝見!

「こんな感じですか。」とポーズ。サービス精神旺盛な西さんです。

持ち物は、ペンケース、キーケース、薄いメモ帳、財布、商工会のご案内、資金調達などのパンフと書類、元帳、黒い手帳、電卓。
遊び心のあるご本人と対照的に、ビジネス感しかない実務的な中身です。

 

電卓!

「これは前職のときに原価売価のボタンのある計算器を買ったんです。商談の際に使っていました。このボタンがあると、わざわざ計算入力しなくていいから速いでしょう。
今は売上の計算とか、領収書の計算とかに使っています。原価ボタンは今は使わないですね!でも電卓自体は長くずっと使っています。」

白紙の元帳?

「中身は白紙なんです。自分で使っているわけではなく、商工会の会員さんに見せるための見本で、説明するために持っています。確定申告の帳簿付けを説明するときに使います。こうやって見せて『ここにこれを書いてください』と。
確定申告って帳簿をそろえたりとか申告とか難しいじゃないですか。そういった経理の相談を受けてちょっとしたサポートもします。」

メモ帳


「これは仕事のメモですね。自分はこれにやることを何でも書いておくんです。頭の中に覚えておかずに、全部メモに残すんですよ。毎日書いて、毎日棚おろししてチェックします。」

終わった項目はOK印をつけるとのことです。

しっかりと頭の中に残しておく人って、実はストレスをため込みやすいらしいです。仕事のことがしっかり頭の中にあるということは、ずっと忘れられていないんです。自分はメモに書いて全部忘れちゃうから、ストレスない!
これは、社会人一年目で先輩に言われて取り入れました。頭の中に残っているとうまく切り替えができなくて。仕事モードのスイッチを切り替えるためにメモをつけたら性格が変わりました(笑)。性格というか、ストレス耐性が強くなったんです。精神的に余裕ができた。言いすぎかな?(笑)

メモ帳はずっと同じのを毎年買っています。半年にいちどくらい買い替えるペースですかね。」

黒い手帳


「これは商工会会員さんの食品販売店の社長さんにいただいたものです。前は配る立場だったのに、今はもらう方になりました。
いや、実際使い心地はあまりよくないですが(笑)、でも今まで配ってたものを使うのも悪くないなって。今でも前の会社や製品に愛着があるんです。良い会社なんですよね。・・・いや、でも洗脳かもしれない。営業職は特に自分が良い商品だと思ってないと売れないので『すごく良い』と刷り込まれているから(笑)。本当に洗脳(笑)。
それを引いても愛着はありますよね。仕事のやりかたもそこで学んだし。トイレ風呂共同の6条畳の寮生活で密な感じでね。」

 

・閑話休題 ~転職の経緯と昔の仲間たち
「大学卒業後、新卒で食品会社に入り、5年半営業職をしていました。その後退職して東京から長崎に帰り、半年間ふらふらした後に、商工会に入ったんです。叔母が長崎市でスペインバルをしているんですが、商工会議所の創業セミナーを受け開業したんです。それで商工会・商工会議所というものを知りました。で、ハローワークで商工会を紹介してもらって、じゃあという感じで入ったんです。長崎で働けるし、もちろん、やる内容もおもしろいと思いました。

「前の会社では寮生活だったんで、新宿の近くにある寮でずっと仕事仲間と一緒に寝起きしていました。丁稚奉公みたいな感じでした(笑)。個室の鍵も古くて。プライバシーもないような寮生活で大学生の延長みたいなノリでした。いたずらで、後輩の冷蔵庫にレトルトカレーをびっしり詰めたりとか(笑)。先輩やみんなでふざけて楽しかったです。」

 

・時間が流れるのがゆっくりになった、西海市に来てからの生活
「今は昼休みに、近いから家に帰ってごはん食べます。今は安定していて、人間らしい生活をできてるなと思います(笑)。
子どもと一緒に海沿いを散歩していると、なんかイイなあと思います。西海市に来て、性格がまるくなりました。ついでに10キロ以上太りました(笑)。
いろいろなことを感謝するようになったと思います。商工会にも感謝しています。」

 

商工会資料


「これはご案内とか借入申込書などの商工会の資料です。商工会の良いところって『資金を借りませんか?!』って押さないんです。その人に実際借り入れが必要かどうかというところから話が入る。そして、少しでも会員さんに都合のいいような借り方を一緒に考えるんです。民間企業では、やはり利益追求団体である以上、貸す側の都合が大いにありますよね。」

 

・商工会のお仕事について


商工会は、民間にはできないことができると思います。
前職の営業では、スーパーの売り場を自社製品で埋め尽くすことが目的だったんです。でもスーパーの一番売り上げが良くなるのは、実はいろいろな商品を入れて、最高の組み合わせを作ることです。矛盾してますよね。
商工会では本当に相手のことを優先して考えて、話ができる。
正しいことを正しくできるから、そういう精神的ストレスがないですよね。」

「ただ、会員企業の事業存続が難しくなる、という話になることもあります。前職のような大企業の営業の仕事では売上未達になっても別に誰も死なないじゃないですか。考えすぎかもしれないですけど今の仕事は、やり方が悪ければ資金がショートしてその人の人生が変わってしまうかもしれない。
経営の相談とは、人生の相談かもしれないと。そう考えてしまいますね。
この重さは感じています。

 

・習慣となっている読書

「父親がすごく本を読んでいたので、その影響で本はずっと読んでいます。1ヶ月に2、3冊ペースですかね。
読むジャンルは決まっていないのですが、特に海外スポーツ選手の自伝が好きです。サッカー選手の自伝を読んで、『ああ、そんなこと考えながらあのプレーをしていたんだな』と思ったりするのが単純に楽しいです。エッセイが好きですね!
読書は勉強というより純粋に楽しみたい。ちなみに、そういうところから、どうでもいい情報を集めるのが好きです。例えば、元プロ野球選手の衣笠祥雄選手が、実は、洋楽にめっちゃ詳しい、とか(笑)。」

こうして集めたどうでもいい情報は、ラグビー部時代の仲間とSNSで共有して楽しむとのこと。

大学卒業してからもう10年とかですけど、ずっと仲良いですね。

 

・商工会に来れば西さんに会える!
商工会の看板の前で、商工会職員募集中ですとさりげなくアピールをした西さん。

「商工会の仕事はあんまり知られていないですけど、実はめっちゃ『ありがとう』って言われますよ!スタートのときも、ピンチのときの借り入れでも『ありがとう』と言われる。『こんなに言われるなんて!』って(笑)。すごくやりがいがあります。職場も、すごくいい職場です。」

「自分は、チームで仕事してみんなで『ヤッター!』と思うタイプ。
集団スポーツをやってたからでしょうね。だってあんな人生でうれしいことないんじゃないですかね、ラグビーで勝ったこととか、くやしかったこともいまだに思い出します。」

 

まとめ

インタビューに出てきたひとつひとつの「(笑)」は、全て「クスクスッ!」ではなく「アハハ!」、むしろ「ギャハハ!」に近い笑いでした。そこまで熱く真摯に語り、ポーズも表情もキレッキレに決めてくれた、明るくサービス精神旺盛な西氏。そして、商工会の仕事にきちんと向き合っているそのひたむきさが、ビジネス一色のカバンの中身に表れているようです。

西海市内の企業と向き合ってきた西氏は、実は「さいかい丼フェア」活性化の陰の立役者でもあります。西氏の笑顔が、西海市商工の未来も明るく照らしてくれそうです。