海に囲まれ、新鮮な海の幸が味わえる西海市。そんな海が大好きなベーヤンが、臨場感あふれる訓練の現場を見てきました。
魚釣りや磯遊びなどで、海や川とたのしく触れ合う私たちと違って、漁師のみなさんにとって海は危険をともなう職場でもあります。
そんな海を知り尽くした、ベテラン漁師さんの『海難救助訓練』があると聞きお邪魔してきました。
場所は寺島にある漁協組合。
無口で日焼けした海の男たちがたくさんいたら……と、心配する間もなくみなさんニコニコ挨拶してくださり、女性の方々もたくさん集まって来られました。
まずはロープ結び。
これがなかなか難しいようで、みなさん試行錯誤です。
女性のみなさんも実に積極的に取り組みます!
お手本を見ながら
「まずは輪っかを作って……」
クロスさせたり、くぐらせたりと、何回も何回も挑戦しています。
輪っかの大きさ、間隔、全体の長さ、そして何重にも巻き締める丈夫さ。
いろいろなロープ結びが応用されているようで、みなさんだんだんと形になってきました。
作っていたのは縄はしご。
「見事に完成!」
ひとりで船に乗ることも多い漁師さん。万が一海に転落した時、この縄はしごで船に上がることができるそうです。
こうして取り付けておけば、もしもの時の命綱になります。
実際に転落してはしごを使う実演は、わかっていてもハラハラ・ドキドキ!
縄はしごで無事船に上がると、みなさんから拍手が送られました!
体当たりの実演をされた市場さんにお話を伺うと、
「水に濡れると一気に体が重くなり動きにくくなるので、長靴や靴は脱ぎ捨てること」「パニックになったり、慌てたりしないで体力を使わないよう、まずは浮かぶこと」が大事だそう。
そして、漁師さんが必ず身につけている「救命胴衣」
私はベストしか知らなかったのですが、ポーチ型、ベルト型といろいろなタイプがあるのだそう。
水に落ちると自動的に膨らむもの、写真のように紐を引いて膨らむものなど、様々なものがありました。
自分の救命胴衣を持参して点検もしっかりと!
80代の元海女さんや、家族で参加されている方もみんなで受講の記念撮影。団結力がうかがえますね。
この後場所を移動して、消防署大崎出張所の救命講師 尾崎さんと大村さんに指導してもらいます。
心肺蘇生(心臓マッサージ)はよくテレビなどで見てはいますが、実際は見よう見まねではなかなかできません。
しかも救急車が到着する平均時間が約9分。その間が救命率や社会復帰の境目という大事な時間だそうです。
手の重ね方、腕の幅、リズムなど細かく指導してもらいます。
質問も次々と出ました。
心臓の位置や押す場所を確認!
AED(自動対外式除細動器)を用いた体験は、みなさんさらに真剣な表情になりました。
「救護者を発見して救急車が来るまで、命を守る行動ができるのは救命士でも医者でもなく、今そこにいるみなさん。救命の連鎖はあなたの知識と行動です」
尾崎さんの言葉がとても重く心に響きました。
マッサージは、ひとりで続けるのはとても大変。スムーズに代わるタイミングのためのポイントや、海水を飲んでいたり、嘔吐があったりした時は横向きに……などいろんな想定も教えてもらいます。
一通り説明を受けた後は、救護者発見から救急車が来るまでを寸劇で擬似体験しました。
「大丈夫ですか?」
「救急車に連絡してください!」
と迫真の演技。
「呼吸してない!胸骨圧迫します!」
「急いでAED持って来て!」
テキパキと指示をしています。
「チャージしました!離れて!」
実際には電気は流れませんが、この言葉はやはり緊張の瞬間です。
命のリレーは強く・早く・絶え間ない胸骨圧迫!
適切な心拍蘇生で無事に救急搬送されました。
救命士の方からは「近くの人を大声で呼んだり、指示役の人がいたりととても良い」とお褒めの言葉。
やっと安堵の表情が見られました。
西海市のどこにAEDが設置されているのか、緊急連絡119に伝えなければならない要点など、家族や職場でも確認するいい機会です。
海に生きる漁業者のみなさんの真剣な取り組みと、救命講師の方の的確な指導を見られて気が引き締まりました。
藻場を守る会の皆さん!これからも事故が無いように、私たちに美味しい西海の海の幸をとどけてください。