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【ウエストのおんな(第14話)】~西彼在住アラフィフ主婦とその日常/ホタルとウシガエル~

ホタルとウシガエル

 

私は海近住子(うみちかすみこ)西海アラフィフパート主婦である。

 

家のまわりの田んぼも田植えが終って20日ほどが過ぎ、緑色の苗が段々と大きくなってきた。

さて、これから夏にかけて家の周りが騒がしくなる。

 

ゲロゲーロ ゲロゲーロ♪

 

カエルの大合唱。

by John De Jong

 

いたるところに出没して、その辺をピョンコピョンコ跳ね回る時期になる。

家の窓ガラスに何匹も張り付き、家の中に侵入して来ては部屋の隅で

 

こっそりミイラ化していたり。

 

私の実家も長崎市内と言えど中心部からやや離れた田舎だったが、カエルがうるさくて夜に寝られないということは無かった。

カエルの合唱を聞いた覚えが無いのだ。

どちらかと言えば、近くの国道を走る車の音のほうが馴染みがあるので、カエルの鳴き声と比べるとそちらの方が違和感がなかった。

 

西彼に嫁に来てから幾年月、この時期の夜は眠ろうとすると漆黒の闇の中で

 

狂ったようにカエルが鳴く。

 

こっちも気が狂いそうじゃぁぁぁぁぁ!!

ありゃなんですか? 1匹鳴き出すと辺り一面のカエルが合わせて鳴きだす。

鳴き止む時も同じタイミングでピタっと鳴き止む。

 

とにかくその声がうるさくてうるさくて眠れない。

『一斉に鳴く、そして一斉に鳴き止む』の絶妙な『大波小波のリズム』がさらにツラさを倍増。

 

車の音がえぇ~

そっちが全然えぇ~

そっちが慣れとるし~

カエルの鳴き方のクセがすごい!!

 

『千鳥のノブ』が乗り移ったようだ。

 

 

カエルの鳴き声に慣れるまでは、寝付くまでにだいぶ苦労したものだったが

あれから20年・・・・。

 

今じゃ 『すんっ』と寝れる。

 

慣れとは怖いものだ。

 

車の音に加えて、カエルの鳴き声にも対応できるようになってしまった。

 

あんまり うれしくないけど。

 

そういえば、まわりで鳴くカエルたちに交じって「ぶお~っぶお~っ」とひときわ目立つ重低音で鳴くカエルもいる。

それは『ウシガエル』というらしい。

たった1匹でもすごい存在感なのだ!

西彼に来て『はじめまして』のカエルだった。

ウン十年前初めてその声を聞いたとき、まわりの甲高い鳴き声とは全く違う、その重みのある低い鳴き声はまだ幼なかった我が家の子ども達を

 

恐怖のどん底へと落とし入れた。

 

実は我が家にはたくさんではないが、時期になると『ホタル』もチラチラと飛んでくる。

生まれてこのかた1度も『ホタル』を見たことのなかった私は、ホタルって麒麟とか龍とかと一緒な感じの『架空の存在』だと思っていた。

だって本当に見たことがなかったから。

が、「ホタル普通におるわ」

「西彼、神~」

ホタルは本当に実在していた。

 

わずか数匹のホタルだが ぼぉ~っ ぼぉ~っと薄緑の光を放ちながらフラリフラリと飛ぶ様子はかなり不気味である。

数匹だからこそ真っ暗な家の外で淡い光を付けたり消したりしながら乱舞する様子はまるで小さな『火の玉』のよう。

あわせて遠くから ぶお~っ ぶお~っと鳴り響く重低音。

この怪しいコンビネーションに、幼き頃の我が家の子ども達は

もう失神寸前。

 

まじリアルだからその辺のお化け屋敷なんかより数倍も怖い。

人一倍怖がりの長男にいたっては、泣くわ わめくわ 自分を見失う勢いで目一杯怖がったものだ。

なのでこの時期わざと子ども達を外に連れ出すという母のカワイイいたずらをよく実施。

 

怖い思いをした翌日は、大好きなウエストで大好きなお菓子を選ばせる。

母の粋なはからい。

いつも100円までのところ、150円までOK!

 

少々ホタルとウシガエルのトラウマを心配したが、20歳を越えた今、悪ガキたちは何も覚えていない。

母のカワイイいたずらは彼らの記憶に無い・・・。

 

そんな私を今日もスーパーウエストは優しく受け入れてくれる。

次回「ウエストのおんな第15話」はこちらから

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